ミドルキングダムの冒険について
2010年と2012年に尖閣諸島で起きた日本と中国の衝突。
中国では大規模な反日デモが発生し、日中関係は戦後最悪と言われるほどまでに悪化した。
それからというもの、日本のリーダー安倍晋三首相と中国のリーダー習近平国家主席は、長らくまともに会談することすらできなかった。
両国が「日中関係は正常な軌道に戻った」と言えるようになったのは、安倍首相と中国の李克強首相がお互いを訪問した2018年になってからだ。尖閣諸島沖の日中間の緊張は変わらないあるいは悪化しているにも関わらず、とりあえず表面上の日中関係は改善してきた。
日中関係が特にぎくしゃくしていた2012-2018年の間、民間の関係ではおもしろい変化があった。
あんなにも反日デモが起きていた中国から、年々すごい勢いで訪日観光客が増加したのである。
2012年時点では日本を訪問した中国人は年間で約143万人しかいなかった。しかし、尖閣諸島問題の影響を受けて微減した2013年を除き、それ以降はうなぎのぼりで増え続け、2018年には年間で約838万人にもなった。
また、観光客の増加と共に非常に興味深いシンクロを示したのが、中国人の対日認識の向上だ。
尖閣諸島事件が発生した翌年の2013年は、なんと92.8%もの中国人が日本に対して悪印象を持っている、という調査が言論NPOと中国国際出版集団によって発表された。これは、まさに最悪の状況だった。
しかし、2012年以降観光客が年々増加するにつれて、中国人の対日認識も早い速度で改善した。
2013年には日本に対して好印象を持っている人は5.2%しかいなかったが、2018年には42.2%にまで上昇した。これは日中世論調査が2005年に始まって以来最高の数字だった(最新の2019年調査によると、中国人の対日認識は依然として改善傾向にあり、過去最高の45.9%まで上昇した)。
一方、同時期における「日本から」の状況は非常に興味深い正反対となっていた。
日本人の対中認識も、中国人のそれと同じように、2012年の尖閣諸島事件後に悪印象が90%以上と最悪な状況になった。しかし、それ以降90%近くが中国に対して悪印象を持っているという状況は国家間関係の"改善"に反してほとんど変わっていない。
また、日本から中国に行く人は減ることさえすれ、以前のような規模あるいはそれ以上に増えることはなかった。
相手と直接衝突するという特別な事件から、時が流れ色々な改善の動きがあったにもかかわらず、悪印象がほぼ全く改善されていないのは少し異常だ。
Pew Research Centerなど海外の調査を見ても、日本人の対中認識のネガティブさは他の国の対中認識と比べても突出しているし、圧倒的に根深い。
ところで、民間関係やパブリックオピニオンはそこまで重要じゃないと思われるかもしれない。
自分も以前はもっと「高い次元のこと」ばかりに関心があった。
しかし、国際関係の構造を考える中で、実はパブリックオピニオンが国家間関係をつくり上げる様々な事柄の大元としてかなり重要な役割を果たしているのではないかと思うようになった。
中国共産党による独裁国家である中国はそこまで単純ではないが、少なくとも日本ではそれが当てはなるように思う。
例えば、日本では全ての成人した国民が1票を投じることができる民主主義的な選挙で日本の舵取りを行う政治家が選ばれる。
また、国民は新聞やテレビ、ウェブなどのメディアを通じて様々な情報を仕入れる。
では、国民の90%近くが中国に対して悪印象を持っていたとしたらどうなるか。
多くの政治家はそのような国民に支持され選挙に勝つため、本心であろうとなかろうと中国に対して厳しい態度を取るかもしれない。
メディアも結局はビジネスなので、売り上げを上げるために「国民が聞きたい情報(=中国をネガティブに扱った情報)」ばかりをクローズアップして報道するかもしれない。
別に中国に迎合したり、中国のポジティブなことばかり報道する必要は全くない。良いことは良いし、悪いことは悪いというだけだ。
ただ、ネガティブなパブリックオピニオンを元に、政治やメディアなど社会全体がネガティブによりすぎるのも問題だ。相手への理解が浅くなってしまうし、日本に対する自己認識も歪んでしまいかねない。
また、好きでも嫌いでも日本は中国と上手く付き合って、発展と平和を確立する必要がある。
では、そんなネガティブな日本人の対中認識をよりバランスのとれたものにするにはどうすれば良いのか。
プロパガンダみたいなメディアを作って、中国に関するポジティブなニュースばかり発信することは簡単だ。しかし、結局みんなは自分が見たいものを見て、信じたいことを信じるので、そんなメディアは全然相手にされないし意味がない。自分がそんなプロパガンダになる気もない。
それでは他に何があるか、、、
そこでひらめいたのが観光だ!
観光を通じて実際に中国を訪れ、様々なことを直接経験すれば、良いところも悪いところも含めてもっと総合的に深く理解できるはずだ。
そうすれば少なくとも相手を偏見だけで嫌うこともなくなる.
そうすれば相手に対するネガティブな情報ばかり目立つ社会の状況も変わる.
そうすれば日中関係がより安定的になって、アジアと世界の平和にもつながる.
実際、観光が相手国への認識を深化・改善するポテンシャルがあることは、上で紹介した中国人の対日認識の変化や他の調査からも示唆されている。また、多くの人がネガティブになりがちかネガティブは情報ばかりクローズアップするメディアの情報をもとに対中認識を形成している中では、観光のような直接的な経験が特に重要だ。
しかも、中国は依然として「絶景の宝庫」だ。
悠久の歴史や壮大な大自然、多様な民族文化など、日本人にまだまだ全然知られていないような絶景がいっぱいある。ただの絶景がある訳ではなく、かなりレベルの高い絶景が多いこともポイントだ。
信じられないかもしれないが、世界遺産の数もイタリアと並んで世界一位だ(中国=55ヶ所、ちなみに日本は23ヶ所)。
しかし、中国大陸周辺にある国は日本人の人気観光地となっている一方、日本からこんなに近い中国を旅行で訪れる日本人だけは非常に少なく、中国は日本人の海外旅行先として「空白地帯」になっている。
それなら、こうしよう!
自分は「冒険家」になって、中国を「ミドルキングダム」と呼ぼう。
そして、「冒険家」の自分は、「ミドルキングダム」という未知の世界を冒険して、新しい道を切り開いて、新しい地図を描こう!!
ミドルキングダムの未知の部分を紹介して、もっと多くの日本人にここを旅してもらって、もっと深い相互理解を進めよう!
正直、ミドルキングダムを理解することはすごく難しい。
すごい大都市があれば貧困の村もあり、広大な砂漠があれば険しい雪山もあり、超良い人もいれば超ウザい人もいる。
でもだからこそ、ミドルキングダムを冒険することは超楽しい。そこにはすごいことからやばいことまでいつも新発見ばかりだ。
また、ミドルキングダムに超キレイな場所がいっぱいあるということは100%保証できる。
だから、未だ見ぬ絶景とその先の持続可能な平和を追い求めて、自分は約200日間に及ぶ「ミドルキングダムの冒険」へと出発することにした。
みんなでミドルキングダムの冒険に行こう!
そして絶景と平和を見つけよう!
プロジェクトの挑戦
挑戦① - ミドルキングダムにある全ての省に行く(全部で33ヶ所)
挑戦② - ミドルキングダムにある全てのユネスコ世界遺産に行く(全部で55ヶ所)
番外編 – “ミドルキングダムで絶対に行くべき場所トップ50”以上に行く
(※自分はミドルキングダム中にある観光地を徹底的に調べてリストアップした160以上の観光都市から”ミドルキングダムで絶対に行くべき場所トップ100”を選んだ。今回は時間の関係でトップ100全部には行けないが、可能な限り多くの場所を訪れる)
旅のルート
なんでもおすすめなどある方は教えてください!!お願いします!!
どこかの都市で重なる方はぜひ会いましょう!(リストアップしている大体の都市には行きますが全てには行けません)
コンタクトフォームやInstagramなどのSNSからご連絡ください!
KAZUKI
早稲田大学社会科学部を卒業後、全額奨学金修士プログラム・北京大学大学院燕京学堂(Yenching Academy of Peking University)へと進学。現在は北京大学のイェンチン・スカラー(Yenching Scholar)兼、香港の教育財団=百賢アジア研究院のアジア次世代リーダー・スカラー(Asian Future Leader Scholarship Program Scholar)として、中国に関する政治と国際関係を専攻している修士2年。
早稲田大学に在学中は、アメリカに1年間と中国に半年間留学し、国際関係を学んだ。また、国際選挙監視活動をする国際NGOにてタイ・スリランカ・ミヤンマーでインターンをし、スリランカでは内戦終結後間もない北部の旧反政府地域にて国際選挙監視員としてスリランカ議会選挙を監視。日本では国連開発計画(UNDP)で長期間のインターンをし、「持続可能な開発目標(SDGs)」に関する広報や渉外業務に携わった。
また、世界の様々な問題を学ぶ中で、実際に自分の目で世界の様々な現実を見てみたくなり、約25の国と地域へもバックパック旅を経験した。観光も楽しんだが、さまざまな場所で(日本も含めて)難民キャンプや旧紛争地、係争地、貧困地域、環境問題、宗教、民族問題、政治運動などを見てきた。
国際政治(外交・安全保障など)や開発(貧困・ガバナンス・環境など)といった広い分野に興味があるが、特に中国に関するアジア国際関係にパッションがある。中国に関する理解を深めるため、北京大学で行われた中国に関する国際シンポジウム・Yenching Globaly Symposiumやプリンストン大学で行われた米中関係に関する国際シンポジウム・Global Governance Forumなどに応募したところ、選考に受かり招聘され参加してきた。
このように様々なことを経験してきた先に達成したいことは、問題や緊張はあるもののただ紛争がないという意味での「消極的な平和」ではなく、紛争の可能性が限りなく低く安定した「持続可能な平和」をアジアに作ること。そのためには、特に日中関係に注目している。また、その中でもまずは日中間の世論(特に日本から中国)のバランス化・改善が重要だと考え、まずは留学と旅行で中国を実際に訪れる日本人を増やそうとしている。
留学に関しては、自らが所属するYenching Academyの広報を、ブログを立ち上げてそれまで全くなかった日本語情報を発信したり、北京大学や東京大学、京都大学で日本人現役学生によるものとしては初めての説明会を開催してきた。
また旅行に関しては、未だ見たことのない中国=ミドルキングダムについて発信する「ミドルキングダムの冒険(Middle Kingdom Adventure)」プロジェクトを立ち上げ、現在は”ミドルキングダム”の隅々まで”冒険”をしている。
いま取り組んでいることを全力で頑張るとともに、これからも様々な角度から「持続可能な平和」をアジアに作る挑戦をしていきたい。
話せる言語は日本語・英語・中国語で、国家総合職試験合格者。