マカオからの急な出発(***10)

マカオ歴史地区の聖ポール天主堂。マカオから特に新型コロナウイルスの問題を感じ始めていたが、観光客は相変わらず多かった。マカオの夜景を楽しんだ僕は、色々と不安だったが急遽マカオを出た。

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1月23日には「武漢封鎖」が始まった。すると、さらに多くの人が問題の深刻さを認識してマスクをつけるようになり、観光地では体温検査もするようになっていた。マスクや体温検査が必要になったことはしょうがなかったが、特に残念だったのは1月24日深夜以降に予定されていた多くの春節イベントが、マカオなど中国各地で急に中止になったことだった。

僕は本当ならマカオで花火や様々なイベントを楽しむ予定でいたが、全てなくなってしまったので急遽マカオを出ることにした。1月23日の夜、失意の中僕が向かったのは中国大陸の都市・珠海。違う都市とはいえマカオと珠海はとても近く、バスに乗って15分くらいで到達できる距離だった。

手前に見えるのがマカオで奥の山の麓に見えるのが中国大陸の珠海。マカオと中国大陸はとても近いが、何か違うと感じさせるものがある。

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マカオと珠海の間には国境のような境界がある。「一国二制度」という特殊な制度の下で、マカオは中国の一部でありつつも大陸とは異なる独自の制度を運用している特別行政区だからだ。なので、マカオと中国大陸（珠海）の間の境界ではパスポートチェックや荷物検査、検疫などがある。でも、1月23日の夜に僕がマカオから珠海へと境界を超えた時点では、新型コロナウイルス問題に関連して特に何の検査や問題もなかった。

急遽マカオを出て珠海まで来たものの、僕は1月24日（2020年は1月25日が春節で1月24日は大晦日のような位置付けだった）の過ごし方をまだ決めきれてはいなかった。選択肢としては春節恒例で有名な広州の花市に行くことか、開平という世界遺産の町並みがある田舎で”より伝統的な”春節を過ごすことがあった。ただ、それぞれについて僕は全然情報がなく、また珠海に着いた頃にはすでに夜遅かったので、その日はそのまま珠海に泊まることにした。

1月は桂林から海南島、深セン、香港、マカオと旅をしてきた。新型コロナウイルスの問題が深刻になる中マカオから珠海に着くと、僕は都会の広州と田舎の開平のどちらに行くかを悩んでいた。

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僕は境界近くの適当なホテルを見つけ、歩いて向かった。15分くらいの距離だったが、道中ほとんどのお店が閉まっていて人気はとても少なかった。春節だからほとんどの人が帰省しているのだろうが、新型コロナウイルスの影響も出始めていたのかもしれない。

ホテルに着くとそこの様子も似たようなものだった。全然人が泊まっている様子はなく、オーナーだけがフロントにポツンといた。チェックインするために僕がホテルに入ってくると、オーナーはマスクをつけてから対応してくれた。やはり新型コロナウイルスの問題に関する認識や状況が一変していたことを感じさせられた一場面だった。

次の日（1月24日）。チェックアウトするために僕が一階のフロントに下りてくると、オーナーはまたそれまではしていなかったマスクをつけ直し対応してくれた。このとき、僕とオーナーは少し話をした。

どうやら、オーナーは以前数年間日本に住んでいたことがあるらしい。東京で留学をしながらバイトをしていたのか愛知県の工場で出稼ぎをしていたのかは忘れてしまったが、日本では良い時間を過ごしたようだった。そして、僕たちは「このコロナウイルスの問題は困ったねー」と話していた。「今ではマスクがどこでも品切れになって買うこともできないね」と話していた。

すると、そんな中でも旅をしている僕を心配してくれたオーナーが、「マスクはいるかい？」と聞いてくれた。僕はそのときに使っていた１枚しかマスクを持っていなかったが、これからも接客でマスクが必要なオーナーの数少ないものをもらうのも申し訳なく、「大丈夫」と言った。でも、そう聞いてくれたのはとてもありがたかった。

オーナーと別れを告げると、僕はマカオと珠海の境界横にある珠海駅まで歩いて戻った。新型コロナウイルスの問題で急速に様々な変化が起き不確かなことばかりだったが、僕は次に向かう都市をとうとう決めていた。さあ、どんな春節が過ごせるのか？